投稿

5月, 2017の投稿を表示しています

[UE4] UE4.16リリースノートピックアップ

イメージ
今回は、先日新しいバージョンが公開されたUE4.16の新機能をピックアップして紹介します。この記事は、ドキュメントの リリースノート にもとづいて作成しました。 ArrayGet(ref)ノードの追加 原文:New: 'Array Get' node. ・Can toggle between returning a reference or copy. ・Using a reference solves a longstanding issue with arrays of structs not being able to easily make changes to the items in the array. 図1左下部のような、配列要素のリファレンスを取得できるArrayGet(ref)ノードが追加されました。図1の例では、デフォルト値がfalseな要素を持つ構造体の配列に対して、ArrayGet(copy)とArray(ref)で配列要素を取得・変更した時、実際に配列内の要素が書き換わるか検証しています。ArrayGet(copy)では構造体のコピーが作成されるため、値を変更しても配列要素の値は変更されませんが、Array(ref)では構造体のリファレンスを変更しているため、配列要素の値が変更されます。 図1 ArrayGet(copy/ref)ノード トグル ノード選択 原文:Updated marquee selection in graph editors. Ctrl dragging now inverts nodes' selection state, instead of only deselecting them (holding alt is now for pure deselection). ノードが選択されているとき、Ctrlを押しながらマーキー選択をすると、範囲内にある選択済みノードは非選択ノードに、非選択ノードは選択済みノードにトグルされるようになりました。 図2 ノード選択のトグル Blueprint関数内での引数のGetノード化 原文:New: Function inputs are now exposed as variable &q

[UMG]インベントリシステムを作る

イメージ
この記事を読むと、UMGで図1のようなインベントリシステムが出来上がります。 図1 インベントリシステム はじめに インベントリシステムは多くのゲームで使われるシステムで、UE4でこれを実現する方法を調べると、既にたくさんの人が実装方法を紹介しています。特に役に立ったのは以下の2つのページです。 ビデオチュートリアル フォーラムでの議論 作り方としてはドラッグ&ドロップ関連の、既に用意された関数を少し実装することで、簡単に作ることができるようです。今回は、図1のような「要素の交換が可能」なインベントリシステムの実装方法を紹介します。 ドラッグ可能ウィジェットの作成 まずは、ドラッグ可能なウィジェットを作成します。図1における、カーソルで掴んで移動しているウィジェットの部分です。はじめに、UI_DraggableElementという名前のWidgetBlueprintを作り、図2のようなレイアウトにします。 図2 UI_DraggableElementのレイアウト SizeBoxを図2の赤い部分のように設定します。サイズは128*128で固定して、SizeBoxにマウスオーバーしたときにカーソルの見た目を手形にするために、CursorをHandにします。 SizeBoxの子ウィジェットにはNamedSlotを配置します。ここでのNamedSlotは、UI_DraggableElementの見た目をHUD上で変更するためのものです。 次に、図3のようにOnMouseButtonDownを実装します。 図3 OnMouseButtonDownの実装 関数のオーバーライド一覧からOnMouseButtonDownを選んで関数を作成し、次に、その関数をDetectDragIfPressedノードを用いて図3のように実装にします。これで、UI_DraggableElement上でマウスの左ボタンが押されると、DetectDragが通知されるようになります。 次に、図4のようにOnDragDetectedを実装します。 図4 OnDragDetectedの実装 こちらも同様に、オーバーライド一覧から作成します。関数は CreateDragDropOperation ノード

[UE4]ベンチマーク結果に応じて描画品質を変える

イメージ
はじめに UE4の[Settings]->[Engine Scalability Settings]には、品質をまとめて設定するボタンがあります。特にAutoボタンは、品質を自動決定してくれる便利な機能です。 図1 Engine Scalability Settings 品質はランタイムで変更することができます。詳しくはalwei氏の 記事 が参考になります。基本的には、図2のようにGetGameUserSettingsノードでGameUserSettingsオブジェクトを取得して、Set~ノードで品質の各項目を設定し、ApplySettingsで設定を反映させます。 図2 Scalabilityの変更方法 今回はその中でも、図1のAutoボタンに相当するRunHardwareBenchmark&ApplyHardwareBenchmarkResultsノードを紹介します。 ベンチマーク結果に応じて品質を変更 図3 RunHardwareBnechmark & ApplyHardwareBenchmarkResultsノード 図3のようにノードを設定すると、Autoボタンに相当する結果が得られます。 各ノードについて説明します。 RunHardwareBenchmarkは、ベンチマークを行うノードです。ただし、これはSet~ノードと同じで、 ノードを実行してもベンチマークが行われるだけで、その結果による最適な設定を反映しません 。Set~ノードではApplySettingsノードを実行することで設定を反映するように、RunHardwareBenchmarkノードでは ApplyHardwareBenchmarkResultsノードを実行することで、ベンチマーク結果による最適な設定を 反映します 。 RunHardwareBenchmarkの引数は次のようになっています。 WorkScale:ベンチマーク試行回数 CPU Multiplier & GPU Multiplier:ベンチマーク結果の倍率 WorkScaleはベンチマークの試行回数です。最終的なベンチマークの結果は、複数回行われるベンチマーク結果の総和をWorkScaleで割ることで得られる平均となります。

[UBT]ビルドイベントで自動ローカルバックアップ環境を作る

イメージ
今回はUE4でビルドイベントを使う方法を紹介します。 はじめに UE4プロジェクトの構成プロパティは少し特殊で、 UBT(UnrealBuildTool) を使う都合上なのか、図1のように、設定できるプロパティが隠蔽されています(実際にはUBTを通して設定している、ということだと思われます)。 図1 プロジェクトの構成プロパティ(左:UE4プロジェクト、右:普通のC++プロジェクト) ここで、図1の右側には「ビルドイベント」や「カスタムビルドステップ」というものが確認できます。これは文字通りビルド前や後に、任意のコマンドを実行できる機能です。何に使うべきかイマイチ思いつきませんが、かなり昔、実行ファイルに必要なdllのコピーに使った記憶があります。 図1の左側にはこの項目が存在せず、機能として利用できないように見えますが、調べてみると、 使用する方法 が提供されていることがわかりました。今回は、これをUE4上で使用してみます。 Pre/Post build step in UBT プロジェクト全てをコピーするビルド後イベントを追加するによって、自動でローカルバックアップを作成してくれる環境を整備してみます。 .uprojectを次のようにしました。 Moduleの[]の後ろにカンマを置き、"PostBuildSteps"以下を実装しただけ(17~22行目)です。 コマンドは、UE4のプロジェクトをDドライブのUE4Project_LocalBackupディレクトリに丸ごとコピーする、といったことをしています。 詳細を少しまとめます。 まずxcopyコマンドですが、これはファイルをディレクトリ構造ごとコピーするコマンドです。詳しくは、 こちら を参照してください。これにプロジェクトのパスを指定することで、プロジェクト内の全てのファイルをディレクトリごとコピーしようというアイデアです。 次に、ソースとして指定している$(ProjectDir)ですが、これはプロジェクトのディレクトリへのパスを表すマクロ(もしくはPATH、環境変数? 正しい名称はわかりません……)です。このように書くと、実行時に$(ProjectDir)の部分がプロジェクトへの絶対パスに置き換わります。使用可能なマクロは UE4のソー

[UnrealC++]UE4における正規表現について

イメージ
今回はUE4で正規表現を使う方法について紹介します。 はじめに UE4で正規表現を使うには、 FRegexMatcher と FRegexPattern を使います。 これらのクラスの実装(ICURegex.cpp)を見てみると、unicode/regex.hをラップして実装していることが確認できます。上記のFRegexMatcherとFRegexPatternのドキュメントを見ても関数の詳細が書かれていませんが、ICURegex.cppの実装と ここ を見れば関数の詳細を調べることができます。 UE4で使用されている正規表現は、名前から明らかにICU正規表現です。ICU正規表現のドキュメントは ここ にありました。把握するのが億劫になりますが、よく使う量指定子やキャプチャなどの書き方は、他の正規表現と大きく変わるものではありません。適当に検索した正規表現の書き方入門にあるものを参考に書いても、問題なく動くはずです。 正規表現のパターンを作る 今回は、文章の中に埋め込まれた「イベントの番号」を取得する方法について考えます。 例えば、次のような文章があります。 「この文章は<event 23>正規表現のテスト<event 551>です。」 この文中から、<event 23>と<event 551>をマッチさせて、キャプチャによって23と551を取得する正規表現を考えます。次のようにしました(筆者は正規表現にそれほど詳しくないので、見苦しい書き方があった場合は指摘するか大目に見てください)。 "< *event *([0-9]+) *>" 「<」は埋め込みの開始文字です。 「 *」は、スペースの0回以上の繰り返しにマッチします。「<event~」や「< event~」や「<      event~」のように、<とeventの間の任意の空白に対応するようしました。 「event」は埋め込みの識別文字です。 「 *」は前述と同じです。「~event21~」や「~event 345~」や「~event       8~」のようにeventと数字の間の任意の空白に対応するようにしました。 「([

[UMG]マウス入力を阻害する-後編-

イメージ
今回は、 前回 の続きです。 前回は、Visibleなウィジェットを配置すると、それより後ろにあるウィジェットはカーソルとインタラクティブできないという内容について紹介しました。 実は、前回紹介した内容では、カーソルとのインタラクティブを完全に阻害できない例外があります。それが、アクターがクリックされたことを検出する「ActorOnClicked」イベントです。 ActorOnClicked イベントの作り方 はじめに、ActorOnClickedイベントでクリック入力を受け取るところまで紹介します。 まず、図1のように、PlayerControllerの「EnableClickEvents」を有効にします。 図1 PlayerControllerの設定を有効にする 次に、クリックしたいアクターのコリジョンを確認します。コリジョンが有効でないと、ActorOnClickedは発生しません。図2はデフォルトのままですが、NoCollisionになっていなければ、とりあえず大丈夫かと思います。 図2 Collisionが有効か確認する 最後に、図3のようにイベントグラフ上にActorOnClickedノードを追加すれば、アクターをクリックした時の処理を追加できるようになりました。このアクターをクリックすると、Helloと画面に出力されるようになります。 図3 ActorOnClickedノードを実装する さて、これでアクターがクリック入力を受け取れるようになりましたが、これは前回のUMGによる手法では阻害できず、ActorOnClickedが実行されてしまいます。 今回に限っては、Branchで処理をはじく、Collisionを無効化する、EnableClickEventsをFalseにする等の方法が考えられます。ですが、それらの方法ではなくUMGによって阻害する方法を紹介します。 Buttonによって入力を阻害する 前回のSpacerのように、 マウス入力を阻害するウィジェットとして Buttonを 配置 します。今回はどんなウィジェットでも良いわけではなく、 Buttonでなければなりません 。また、図4の右端のように、 Buttonの前面をVisibleなウィジェット(図4ではBa